職人と工程

仕事は嘘をつかない

50年、100年先に修復が必要になったとき、
未来の職人たちがうなづく仕事をしています

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若林工芸舎の施工内容

漆塗りと箔押し

彩色(さいしき)

錺り金具(かざりかなぐ)

職人のご紹介

錺師kazarishi

仏壇・仏具を華麗に飾るきらびやかな金属製の金具を作り、納めるのが錺師である。

錺金具の材料には目的により銅、真鍮、金、銀などが選ばれる。木槌や金槌で板金を打ち伸ばし成形する「緞金」、金属を溶解し鋳型で成形する「鋳金」、そして表面に文様を彫り込む「彫金」をほどこし、仕上げに輝きを保つメッキ加工をほどこす。

京都の錺金具は、それぞれの技法を専門にする複数の職人の手を経て完成に至る分業制が伝統である。錺師は採寸し、図面に沿って板金から金具の形を切り抜き、時には成形し、彫金師に渡す。
錺師の仕事はそれだけではない。注文主の窓口となり、意匠、素材、予算決定をし、職人を手配する錺金具製作の総合コーディネーターの役割も担う。質の高い仕事を支える京都ならではの伝統ある制度だ。

箔押師hakuoshishi

仏壇・仏具のまばゆい金箔をほどこすのが箔押師の仕事。塗師が仕上げた下地に、厚さ1万分の1ミリの金箔を、継ぎ目なく貼ってゆく。

箔押師の仕事の中で最も時間が費やされ、その技量が発揮されるのは、金箔を接着させる漆を下地に塗る作業。その日の湿度から漆が乾燥する時間を考慮し、使う漆の粘度を微妙に調整、下地表面に均一に塗布する。この技が出来上がりの質を左右する。その作業は、仏具の細かい部分のみならず、広い壁面や太い柱にも及ぶ。一度に金箔をほどこせる面積の見極めも肝心だ。

漆を塗り、接着に適した時間内に、3寸6分または4寸2分角の極薄の金箔を1枚1枚置いていく。不安定な状態の金箔を、真綿を使って適度な力加減で押さえながら、磨くように下地に密着させる。重なりがわからないよう仕上げるところに、熟練の技が見て取れる。

塗師nushi

塗師(ぬし)とは、仏壇・仏具の土台となる木地に下地の漆を塗る職人である。
ウルシ科の落葉高木の樹皮から採取されたペースト状の漆は、塗り重ねることで木地自体の強度を高めると共に、防水、防虫、抗菌などの働きも備わる。日本人との関わりは、1万年を超えると言われる。

塗師の仕事は、下地を整えた後、女性の髪を束ね木に挟んだ平たい刷毛で、木地表面に漆を一気に均一に塗っていく。その木地を密室空間の「室(むろ)」の中で適度に乾燥。次に細かく粉砕された炭を使い、表面が滑らかになるよう丁寧な研ぎをほどこす。塗り、乾燥、研ぎの作業を数回繰り返すことで、硬質で艶のないマットな状態となり、艶のある漆をほどこす蝋色師(ろいろし)や金箔を貼る箔押師へと委ねられ、完成に至る。
完成品からは見えない基礎を成す塗師。その技量が、時を超えて受け継がれるものの価値を左右する。

彩色師saishikishi

彩色師とは、仏具や社寺建造物、本堂内などに岩絵の具や泥絵の具、金箔、砂子などを用いて色をのせていく職人をいう。その時々の依頼に応じて、新調する仕事と修復の両方を行う。

彩色技法としては、極彩色・淡彩色・木地彩色、古色彩色などがあげられる。主に、彩色作業は工房内で行う。
彩色師が紙にしつらえた彩色を、表具師が現場で柱や襖などに施工する分業制がとられることもある。
仏像彫刻への極彩色、木地彩色、古式彩色から、欄間や天井画、壁画、額などの彩色、修復など、仕事は多岐にわたり、複数人が手分けして仕事を完成させていく。

彩色師には細やかな職人仕事に加え、設置する場の空気に応じた意匠の提案など、空間を総合的に見切る能力が必要とされる。彩色師の仕事は、空間デザインと施工を預かる総合芸術である。
蒔絵の仕上りには、職人の感性が色濃く現れる。

木地師kijishi

木地師とは仏具を作る際に、木材で作る枠組・形を担当する職人をいう。
(その中で特に、各宗派ごとのご本尊をお祀りする御宮殿を作る職人を宮殿師という。)

木地師の中でも、特に宮殿師の仕事は、本堂の荘厳様式を模した”小型”の宮殿を製作する第一走者である。
図面の代わりに「杖」と呼ばれる棒を頼りに、自作の鉋や「型」を使って細やかな手仕事を進める。
その後を木彫師、塗師、錺師、箔押師、彩色師、蝋色師などが引き継ぐ。

分業で進む仏具製作の中で、宮殿師は後工程の職人たちがほどこす仕事や、湿度による木の収縮を想定し、木地に「塗り代(漆塗りの厚み)」となる隙間を作る。

木地師の仕事は、木地が完成しても表面に現れることのない仕事でありながら、全体のバランスを左右する大事なポジションを担っている。

仏師busshi

仏師とは、仏像を彫る職人をいう。新たに彫る仏像以外に、数十年~数百年前に彫られた仏像の修復も行う。

仏具製作の要となる仏像(ご本尊)は仏師が木像を彫り、仕上げ段階の漆塗りは塗師、金箔仕上げは箔押師、極彩色仕上げは彩色師などに託される。
家庭の仏壇に祀る手のひらに乗るほどの仏像も彫れば、寺院本殿の中央に安置される大きな仏像も彫る。用いる材には檜、桜、白檀、伽羅、松などが選ばれる。一木造りと寄木造りがあり、200年、300年と長い歳月を生きる仏像には、反りがこないよう寄木造りが好まれる。

仏師はまず図面を起こす。仏像の下絵を描き、実物大に拡大。寺院の納まる場所に実寸の下図を据えて全体のバランスを確認。その後、下図を木に転写して荒彫りに入る。仏像は一つの工房で弟子たちと共に手分けして彫り進め、仏師が仕上げの一刀を入れて完成まで導く。

蒔絵師makieshi

蒔絵師とは、漆器の上に金粉や銀粉で絵付けをほどこす職人をいう。漆の工芸技法は、京都の1200年以上歴史ある伝統産業として、日本独自に発展してきた。
つい立て、屏風、飾り棚の扉、文箱、印籠などに新たに漆工芸をほどこすこともあれば、修理、修復を依頼されることもある。

蒔絵師の仕事は、塗師が木地に漆塗りをした表面に下絵を描く置目から始まる。薄手の紙に下絵を描いて転写する。次に地塗り、炭研ぎ、粉入れ、上絵付け、毛打ち、青貝貼りなどの仕上げを行う。

鏡のように磨かれた漆の平面に、蒔絵筆や刷毛を用いて細やかな手仕事をのせていく。工房には室(むろ)が設置され、ホコリや小さな虫がつかぬよう、湿度80.0%を管理しながら高湿度な空間で蒔絵を乾かす。
蒔絵の仕上りには、職人の感性が色濃く現れる。

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