建造物装飾の修理

錺金具

KAZARIKANAGU

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錺金具

錺金具
KAZARIKANAGU

主材料

銅、真鍮、金箔、銀箔

工程

[修理] 洗浄→素地調整→仕上げ(水銀鍍金・金箔押・電気鍍金・煮黒目等)
[新調] 型取り・設計→型拵え→彫金→仕上げ(水銀鍍金・金箔押・電気鍍金・煮黒目等)

※水銀鍍金の場合は仕上げと彫金の順が逆になります。

工法

[修理] 汚れ・錆を落とし、歪み・破損部を加熱し修正します。その後、表面加工を行います。
[新調] 型を取り、図面を起こします。図面に沿い金属板(銅等)を成形したうえで彫金を施し、表面加工を行います。

特長

当当社では、最新設備を設置した水銀鍍金工房を稼働させています。水銀鍍金加工では無機水銀を使用するために、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者資格保有者が施工に当たります。

錺金具の歴史と特性

人類が金属を扱った歴史は、B.C6000-5000年前からと言われています。最初に扱った金属は銅でした。銅剣や銅戈、銅鏡などの武具や祭器の使用から、鉄鎌や鋤といった農具などへと使用の範囲は広がり、人類の金属使用は現代まで続きます。銅→青銅(銅と錫の合金)→鉄といった順番に扱える金属も増えていきます。金属はその成分の含まれた鉱石を溶解させて精製することで必要な金属を取り出すため、中には高温を出力できないと取り出せない金属があり、金属の歴史は人類の取り扱える火の温度の歴史と言っていいかもしれません。現代では希少金属(レアメタル)と言われるものも精製できるようになり、科学や工学には欠かせないものです。仏具、神具に使用される金属は、銅・青銅・真鍮・鉄・金・銀・錫などが挙げられますが、近年では白金(プラチナ)などの使用をリクエストされることもあります。

また、金属はある種の金属ともう一種の金属、さらに違う元素を持つ金属が合わさることでそれぞれの特徴を生かした性質を持つことができます。仏具や神具に使用される真鍮も銅と鉛と亜鉛の合金であり、銅と錫を混ぜることで「佐波理」といった非常に音色のいい金属を作ることも可能です。

仏教の伝来とともに日本でも金属製の仏具が製作されました。神社や寺院の建造物には、荘厳さを増す装飾として、木材の補強として様々な錺金具が作られました。さらに金属の一種である金箔や銀箔は、金属やその他の素材をコーティングする被膜として利用され、焼成することで金属同士が化合し表面塗膜となる鍍金(ときん・めっき)といった技法で利用されてきました。

錺金具の技法

金工の技法としては、鋳金(ちゅうきん)・鍛金(たんきん)・彫金(ちょうきん)に分けられます。鋳金は金・銀・銅・鉄・錫などの金属やそれらの合金の溶解したものを、砂や石などで作った型に流し込み、冷えるまで待ってから型を外し形成します。鍛金は、金属を打ち延ばしたり、縮めたりして商品の形を形成します。切株のような形をした木台には角形や丸形の穴がたくさん開いていて、その様々な形の穴にはへの字形や直線の当て金という鉄製の工具を差し込み、金具を思い通りの形に曲げたり、折ったりして形を作り出します。また、「ヤニ床」という松やに・地の粉(珪藻土など)・松煙・種子油を練って固めたもののうえで金属板をたたいて形成をすることもあります。彫金は鍛金した金属へ模様を付ける作業です。透かしを施す場合は鋸引きした後、「きさげ」して断面を調整します。模様を彫る鏨(たがね)の先は様々な巾や厚みの直線であったり、弧を描いたものもあり、どのような模様を打ち込むかで鏨を変えて模様を描きます。金属は固いので、鏨を槌で打ち付けることでしっかりとした模様が刻むことができます。一段高く見えるように彫る高肉彫り(たかじしぼり)や線条で表す毛彫り、片切彫りや肉合い彫り、小さな丸い粒を打刻する魚々子(ななこ)彫りといった技法があります。鋏で切り離したところは「バリ」というギザギザの部分ができるので、鑢(やすり)などで表面を整えることもきれいに仕上げるコツと言えます。

仕上がった金属は、そのままでは空気に触れて酸化、風化してしまいます。そこで表面に塗装をしたり、鍍金を掛けたりします。当社で取り扱う着色は黒色と金色、銀色が多いでしょうか。黒色は化学塗料を吹き付け乾燥させて塗膜を構成するものと、漆を塗布して焼き付けて塗膜を構成する方法、金属を化学変化で変色させることで発色させる方法(煮黒目など)等があります。また金色は、漆を塗布したうえに金箔を押す方法と、水銀を仲介として化合させる方法があります。

焼き鈍しや、希硫酸・苛性ソーダでの酸洗いは、表面をきれいにする効果があります。表面に汚れが付着していると均一な発色がでません。

文化財修理で使用する水銀鍍金の工法は、まず預かったものを苛性ソーダで煮沸した後、ブラシなどで汚れを除去して、希硫酸に漬け込み、重曹で中和させます。焼き鈍しを行った後、再度希硫酸に漬け、真鍮ブラシやバフを使用し研磨することで素地の状態まで戻します。ここからの工程で水銀を使用していきます。水銀鍍金は「みずがね」を対象物に塗布して、金箔もしくは銀箔などを押し重ねた後に焼成します。希硫酸に漬け、重曹を付けたブラシで研磨します。または、金を水銀に溶かし込んだもの(=アマルガム)を塗布し、希硫酸漬け込み、重曹研磨という工程を経る方法があります。

最後は「色上げ」と言って、苅安や光明丹といった植物性薬剤を刷毛塗りして色つやの調整を行います。六葉などは主座・敷座・丸座・樽の口などの部品に分かれ、樽の口と釘の部分は鑞付けを行い接着します。

錺金具の施工範囲

勾欄地摺や鉾木などへ取り付ける笹金具、擬宝珠・根巻金具・露盤宝珠・相輪などの鋳造品へ、金色や黒色に着色加工ができます。
唄金具・六葉(釘隠し)など多量になる金具もあれば、破風金具など建造物に合わせた一品物の金具もあります。天井の格縁や竿縁、建具類の框には、唐草模様や七宝や青海波などの和柄が入った十字金具や一文字・丁字金具が打たれます。中空に仕上げる箱形や縁だけ膨らせる「縁膨れ」といった立体的な金具を作ることもあります。障子の留め具になる八双金具などは無地で仕上げても綺麗に見えます。襖の引手金具は魚々子に仕上げた部分を墨差しすると一層金色が映えて綺麗に見えます。

錺金具の施工例

・鹿児島県鶴丸城御楼門
・京都府総本山知恩院御影堂
・京都府金剛寺(八坂庚申堂)
・京都府元離宮二条城
・京都府真宗本廟(東本願寺)御影堂門
・京都府神泉苑善女竜王社拝殿
・奈良県唐招提寺
・京都府玉田神社本殿

当社の錺金具

当社は水銀鍍金技法を持っていることに特長があります。文化財修理案件では、修理対象金具が水銀鍍金で施工されていれば、水銀鍍金で戻さなければなりません。水銀というと社会の授業で習ったような公害があまりに有名なので、危険というイメージでとらえられます。しかし、現代では無機水銀という比較的体内に残りにくいものを使用していること、法令に基づいて防毒マスクをしっかり使用しているので影響はありません。特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者資格を取得しています。

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