仏具・荘厳具
このページの要点
宮殿(くうでん)は、須弥壇の上に据えて御本尊を安置する、屋根を持つ小型の建築的な荘厳具です。実際の堂宇と同じく屋根・組物・柱を備え、漆塗り・金箔押し・彩色・錺金具の技術が凝縮されています。経年では金箔の剥離・漆の艶引け・金具の緩みが生じ、いずれも下地や木地の状態が原因であることが多いため、表面だけを直すと再発します。

宮殿とは、寺院の内陣で御本尊を安置するために設けられた、屋根を持つ小型の建築的な荘厳具です。
「くうでん」と読みます。「きゅうでん」ではありません。多くは須弥壇の上に据えられ、屋根・軒・組物(斗栱)・柱・扉といった、実際のお堂と同じ構成要素を備えています。いわば御本尊のための「お堂の中のお堂」です。
屋根の形式は入母屋・唐破風など、宗派や寺院によってさまざまです。浄土真宗では「御宮殿(おくうでん)」と呼び、阿弥陀如来を安置する形式が定まっているなど、宗派ごとの約束事があります。修理にあたっては、その寺院の形式を読み取ることが出発点になります。
屋根まわり・組物・軸部・基壇の四つに大別でき、それぞれに漆塗り、金箔押し、彩色、錺金具が施されます。
| 屋根まわり | 屋根板、軒、垂木、破風、懸魚(げぎょ=破風の下に下がる飾り)。反りをどう出すかで印象が決まります。 |
| 組物(斗栱) | 斗(ます)と肘木を組み上げて軒を支える部分。部材が小さく数が多いため、修理では最も手間がかかります。 |
| 軸部 | 柱、長押、扉、羽目板。彫刻や彩色が入る場合があります。 |
| 基壇 | 宮殿を受ける台。須弥壇と接する部分です。 |
一つの宮殿に打たれる錺金具は、小さなものを含めると数百点に及ぶことも珍しくありません。修理で解体する際に、どの金具がどこに付いていたかを記録しておかないと、元通りに組めなくなります。

目に見えるのは金箔の剥離や金具の緩みですが、原因の多くは下地の劣化・湿気・木地の動きにあります。
| 金箔の剥離 | 原因:下地の痩せ、裏側からの湿気。見え方:浮き→めくれ→脱落。灯明の煤による黒ずみが重なると気づきにくくなります。 |
| 漆の艶引け・白化 | 原因:紫外線、湿気、拭き掃除による摩耗。見え方:光沢が鈍る、白っぽく曇る、細かいひび割れ。 |
| 彩色の褪色 | 原因:顔料を固着させている膠(にかわ)の劣化。見え方:絵柄が不明瞭になり、触れると粉が付くこともあります。 |
| 金具の緩み・脱落 | 原因:鋲穴の傷み、木地の収縮。見え方:浮き、ぐらつき、紛失。 |
| 木地の緩み | 原因:乾湿の繰り返しによる仕口(部材の接合部)の開き。見え方:全体のがたつき、隙間。 |
「金箔だけ押し直せばきれいになる」と思われがちですが、多くの場合それでは再発します。金箔は極めて薄く、それ自体に強度はありません。支えているのは下の漆と下地です。原因が下地にある以上、そこまで戻さなければ同じことが繰り返されます。
詳しくは漆箔とはもあわせてご覧ください。
現地調査で方針を決めたうえで、解体・記録から始めて、木地・下地・塗り・金箔・金具の順に整え、組み上げます。
当社は漆塗り・彩色・錺金具を自社の技能者で一貫して施工します。工程ごとに業者が分かれないため、細部の納まりや金の色調を全体で揃えやすいという利点があります。


「当初の材料をどれだけ残せるか」と「次の修理まで何年もたせるか」の二つで判断します。
修理には幅があります。表面を整えるだけの処置から、すべて解体して下地からやり直す全面修理まで、費用も期間も大きく変わります。
| 部分的な手当て | 剥落しかけた箇所の止め、緩んだ金具の締め直し、局所の金箔押し直し。傷みが一部にとどまり、下地が健全な場合。 |
| 中程度の修理 | 解体して洗浄・木地補修を行い、傷んだ面のみ塗り直し・押し直し。全体の色調が揃うかを見極める必要があります。 |
| 全面修理 | すべて解体し、下地から塗り直して金箔・金具も新補。数十年単位でもたせたい場合や、下地全体が劣化している場合。 |
文化財に指定・登録されている場合は、当初材をできる限り残すことが原則となり、所轄の文化財部局との協議が必要です。指定がない場合でも、当初の意匠と技法を尊重する考え方は変わりません。
須弥壇は「壇」、宮殿は「屋根付きの覆い」、厨子は「扉付きの箱」です。役割が異なります。
| 須弥壇 | 御本尊を安置するために一段高く設けた壇。宮殿や厨子を載せる土台にもなります。 |
| 宮殿 | 須弥壇の上に据える、屋根を持つ建築的な覆い。扉を持つ形式もあります。 |
| 厨子 | 仏像や経巻を納める扉付きの箱型の仏具。単独で用いることもあります。 |
実際の内陣では、須弥壇の上に宮殿が載り、その中に御本尊が安置されるという構成が一般的です。須弥壇の修理・新調/厨子とはもあわせてご覧ください。
寸法・傷みの程度・どこまで手を入れるかで大きく変わるため、一律の相場はありません。現物を拝見してお見積もりします。
費用を左右するのは、主に次の要素です。
期間については、漆は湿度で硬化するため、各工程のあいだに硬化を待つ時間が必ず必要です。塗り重ねを急ぐことができないため、規模によっては年単位のお時間をいただく場合があります。法要など期日のご希望がある場合は、早めにご相談ください。
費用の考え方は神社・お寺の修繕費用、補助制度は使える補助金・助成金で詳しく解説しています。
宮殿とは、寺院の内陣で御本尊を安置するために設けられた、屋根を持つ小型の建築的な荘厳具です。多くは須弥壇の上に据えられ、屋根・軒・組物・柱・扉など実際の堂宇と同じ構成要素を備えています。「くうでん」と読み、「きゅうでん」とは読みません。
須弥壇は御本尊を安置するために一段高く設けた壇、宮殿はその上に据える屋根付きの建築的な覆い、厨子は仏像や経巻を納める扉付きの箱型の仏具です。内陣では須弥壇の上に宮殿が載り、その中に御本尊が安置される構成が一般的です。
多くの場合それでは再発します。金箔は極めて薄く、それ自体に強度はありません。剥離の原因は下地の痩せや裏側からの湿気にあることが多いため、下地の状態を確認し原因を処置したうえで押し直す必要があります。
現地調査で方針を決めたうえで、記録と解体、錺金具の取り外しと番号付け、洗浄と古塗膜の処理、木地補修、下地と漆塗り、金箔押しと彩色、金具の修理と鍍金、組立・据付という順で進みます。解体前の記録を省くと元に戻せなくなるため、記録が重要です。
寸法、部材点数、解体の範囲、金箔を押す範囲、金具を新補するか、彩色の有無などで大きく変わるため一律の相場はありません。現物を拝見したうえでお見積もりします。漆は湿度で硬化するため工程間に待ち時間が必要で、規模によっては年単位の期間をいただく場合があります。
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