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仏具・荘厳具

宮殿(くうでん)とは

株式会社若林工芸舎 文化財・社寺建築の装飾専門工事更新:

このページの要点

宮殿(くうでん)は、須弥壇の上に据えて御本尊を安置する、屋根を持つ小型の建築的な荘厳具です。実際の堂宇と同じく屋根・組物・柱を備え、漆塗り・金箔押し・彩色・錺金具の技術が凝縮されています。経年では金箔の剥離・漆の艶引け・金具の緩みが生じ、いずれも下地や木地の状態が原因であることが多いため、表面だけを直すと再発します。

知恩院御影堂の御宮殿と御須弥壇
浄土宗総本山知恩院様 国宝御影堂の御宮殿・御須弥壇。当社が漆塗り・金箔押しを施工しました。 施工実績を見る

宮殿とは何ですか

宮殿とは、寺院の内陣で御本尊を安置するために設けられた、屋根を持つ小型の建築的な荘厳具です。

「くうでん」と読みます。「きゅうでん」ではありません。多くは須弥壇の上に据えられ、屋根・軒・組物(斗栱)・柱・扉といった、実際のお堂と同じ構成要素を備えています。いわば御本尊のための「お堂の中のお堂」です。

荘厳(しょうごん)とは 仏堂や仏具を美しく飾り、その尊さを表すことをいいます。単なる装飾ではなく、信仰上の意味を持つ行為として位置づけられます。

屋根の形式は入母屋・唐破風など、宗派や寺院によってさまざまです。浄土真宗では「御宮殿(おくうでん)」と呼び、阿弥陀如来を安置する形式が定まっているなど、宗派ごとの約束事があります。修理にあたっては、その寺院の形式を読み取ることが出発点になります。

宮殿はどのような部材でできていますか

屋根まわり・組物・軸部・基壇の四つに大別でき、それぞれに漆塗り、金箔押し、彩色、錺金具が施されます。

屋根まわり屋根板、軒、垂木、破風、懸魚(げぎょ=破風の下に下がる飾り)。反りをどう出すかで印象が決まります。
組物(斗栱)斗(ます)と肘木を組み上げて軒を支える部分。部材が小さく数が多いため、修理では最も手間がかかります。
軸部柱、長押、扉、羽目板。彫刻や彩色が入る場合があります。
基壇宮殿を受ける台。須弥壇と接する部分です。

一つの宮殿に打たれる錺金具は、小さなものを含めると数百点に及ぶことも珍しくありません。修理で解体する際に、どの金具がどこに付いていたかを記録しておかないと、元通りに組めなくなります。

宮殿の組物・彫刻・錺金具
臨済宗南禅寺派海眼寺様観音堂の宮殿。組物や彫刻、錺金具が細かく組み合わされています。 施工実績を見る

宮殿によくある傷みと、その原因は何ですか

目に見えるのは金箔の剥離や金具の緩みですが、原因の多くは下地の劣化・湿気・木地の動きにあります。

金箔の剥離原因:下地の痩せ、裏側からの湿気。見え方:浮き→めくれ→脱落。灯明の煤による黒ずみが重なると気づきにくくなります。
漆の艶引け・白化原因:紫外線、湿気、拭き掃除による摩耗。見え方:光沢が鈍る、白っぽく曇る、細かいひび割れ。
彩色の褪色原因:顔料を固着させている膠(にかわ)の劣化。見え方:絵柄が不明瞭になり、触れると粉が付くこともあります。
金具の緩み・脱落原因:鋲穴の傷み、木地の収縮。見え方:浮き、ぐらつき、紛失。
木地の緩み原因:乾湿の繰り返しによる仕口(部材の接合部)の開き。見え方:全体のがたつき、隙間。

「金箔だけ押し直せばきれいになる」と思われがちですが、多くの場合それでは再発します。金箔は極めて薄く、それ自体に強度はありません。支えているのは下の漆と下地です。原因が下地にある以上、そこまで戻さなければ同じことが繰り返されます。

詳しくは漆箔とはもあわせてご覧ください。

宮殿の修理はどのような手順で進みますか

現地調査で方針を決めたうえで、解体・記録から始めて、木地・下地・塗り・金箔・金具の順に整え、組み上げます。

  1. 現地調査 傷みの範囲と原因を確認し、どこまで手を入れるかの方針とお見積もりをご提示します。
  2. 記録・解体 解体前に全体と細部を撮影し、部材と金具の位置を記録します。ここを省くと元に戻せなくなります。
  3. 金具の取り外し 一点ずつ番号を付けて管理します。欠損しているものも記録に残します。
  4. 洗浄・古塗膜の処理 煤や汚れを除去します。旧塗膜を残すか掻き落とすかは、方針によって判断が分かれる工程です。
  5. 木地補修 割れ・緩み・欠損を、刻苧(こくそ)や埋木で補修します。
  6. 下地・漆塗り 下地を付けては研ぐことを繰り返し、中塗・上塗と漆を重ねます。
  7. 金箔押し・彩色 漆を接着剤として金箔を押し、必要に応じて彩色を整えます。
  8. 金具の修理・鍍金 変形の矯正、欠損の補作、鍍金や漆箔による仕上げを行います。
  9. 組立・据付 記録に従って組み上げ、金具を打ち直して完了です。

当社は漆塗り・彩色・錺金具を自社の技能者で一貫して施工します。工程ごとに業者が分かれないため、細部の納まりや金の色調を全体で揃えやすいという利点があります。

知恩院御影堂の御宮殿(施工前)知恩院御影堂の御宮殿(施工後)
知恩院御影堂の御宮殿。左が施工前、右が施工後です。 施工実績を見る

どこまで手を入れるかは、どう判断しますか

「当初の材料をどれだけ残せるか」と「次の修理まで何年もたせるか」の二つで判断します。

修理には幅があります。表面を整えるだけの処置から、すべて解体して下地からやり直す全面修理まで、費用も期間も大きく変わります。

部分的な手当て剥落しかけた箇所の止め、緩んだ金具の締め直し、局所の金箔押し直し。傷みが一部にとどまり、下地が健全な場合。
中程度の修理解体して洗浄・木地補修を行い、傷んだ面のみ塗り直し・押し直し。全体の色調が揃うかを見極める必要があります。
全面修理すべて解体し、下地から塗り直して金箔・金具も新補。数十年単位でもたせたい場合や、下地全体が劣化している場合。

文化財に指定・登録されている場合は、当初材をできる限り残すことが原則となり、所轄の文化財部局との協議が必要です。指定がない場合でも、当初の意匠と技法を尊重する考え方は変わりません。

須弥壇・厨子との違いは何ですか

須弥壇は「壇」、宮殿は「屋根付きの覆い」、厨子は「扉付きの箱」です。役割が異なります。

須弥壇御本尊を安置するために一段高く設けた壇。宮殿や厨子を載せる土台にもなります。
宮殿須弥壇の上に据える、屋根を持つ建築的な覆い。扉を持つ形式もあります。
厨子仏像や経巻を納める扉付きの箱型の仏具。単独で用いることもあります。

実際の内陣では、須弥壇の上に宮殿が載り、その中に御本尊が安置されるという構成が一般的です。須弥壇の修理・新調/厨子とはもあわせてご覧ください。

費用と期間はどのくらいかかりますか

寸法・傷みの程度・どこまで手を入れるかで大きく変わるため、一律の相場はありません。現物を拝見してお見積もりします。

費用を左右するのは、主に次の要素です。

  • 宮殿の寸法と部材点数(特に組物の複雑さ)
  • 解体の範囲(部分か全面か)
  • 金箔を押す範囲と、金具を新補するかどうか
  • 彩色の有無と、その傷み具合
  • 現地施工か、お預かりして工房で施工するか

期間については、漆は湿度で硬化するため、各工程のあいだに硬化を待つ時間が必ず必要です。塗り重ねを急ぐことができないため、規模によっては年単位のお時間をいただく場合があります。法要など期日のご希望がある場合は、早めにご相談ください。

費用の考え方は神社・お寺の修繕費用、補助制度は使える補助金・助成金で詳しく解説しています。

よくある質問

宮殿(くうでん)とは何ですか

宮殿とは、寺院の内陣で御本尊を安置するために設けられた、屋根を持つ小型の建築的な荘厳具です。多くは須弥壇の上に据えられ、屋根・軒・組物・柱・扉など実際の堂宇と同じ構成要素を備えています。「くうでん」と読み、「きゅうでん」とは読みません。

宮殿と須弥壇と厨子の違いは何ですか

須弥壇は御本尊を安置するために一段高く設けた壇、宮殿はその上に据える屋根付きの建築的な覆い、厨子は仏像や経巻を納める扉付きの箱型の仏具です。内陣では須弥壇の上に宮殿が載り、その中に御本尊が安置される構成が一般的です。

宮殿の金箔が剥がれてきました。金箔だけ押し直せばよいですか

多くの場合それでは再発します。金箔は極めて薄く、それ自体に強度はありません。剥離の原因は下地の痩せや裏側からの湿気にあることが多いため、下地の状態を確認し原因を処置したうえで押し直す必要があります。

宮殿の修理はどのような手順で進みますか

現地調査で方針を決めたうえで、記録と解体、錺金具の取り外しと番号付け、洗浄と古塗膜の処理、木地補修、下地と漆塗り、金箔押しと彩色、金具の修理と鍍金、組立・据付という順で進みます。解体前の記録を省くと元に戻せなくなるため、記録が重要です。

宮殿の修理費用はいくらですか

寸法、部材点数、解体の範囲、金箔を押す範囲、金具を新補するか、彩色の有無などで大きく変わるため一律の相場はありません。現物を拝見したうえでお見積もりします。漆は湿度で硬化するため工程間に待ち時間が必要で、規模によっては年単位の期間をいただく場合があります。

ご相談の窓口

寺院の方

宮殿・厨子・脇壇・天蓋などの傷みが気になる

全体と傷んだところの写真3枚程度、所在地をお送りください。修理か新調かも含めて、方針と概算の進め方をご案内します。

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現地調査・概算見積りは無料です(写真での概算を含みます)。

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建設会社・設計事務所の方(内陣・荘厳具の工事)

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