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漆の技法と材料

刻苧(こくそ)とは

株式会社若林工芸舎 文化財・社寺建築の装飾専門工事更新:

このページの要点

刻苧(こくそ)とは、漆に木の粉などを練り込んだ、パテ状の充填材です。「木屎漆(こくそうるし)」とも書きます。木地の欠損・割れ・接合部の隙間を埋めるために使う、塗る前の目立たない材料ですが、ここで埋め残した形は、最後まで表面に響きます。

刻苧とは何ですか

漆に木の粉や繊維を混ぜて練った、粘土状・パテ状の充填材です。

これを、木地の欠けた部分、割れ、部材どうしの接合部である仕口(しくち)の隙間などに詰めて、平らに均します。

硬化すると漆の強度を持つため、単に別材を埋め込むより一体的に馴染みます。木地と塗膜のあいだをつなぐ材料、と考えると分かりやすいでしょう。

「木屎(こくそ)」の字 木の粉、つまり木を削ったときに出る細かい粉を指します。これを漆で練ることから木屎漆と呼ばれます。読みは「こくそ」です。

刻苧は何を混ぜてつくりますか

生漆に、デンプン糊・綿・木粉などを練り合わせてつくります。

生漆全体を固める材料です。硬化すると漆の強さを持ち、木地と一体になります。
デンプン糊粘りを加え、練りやすく、隙間に押し込みやすくします。
綿繊維を混ぜることで、硬化したあと割れにくくします。
木粉体積をつくります。「木屎(こくそ)」の名はここから来ています。

配合は、埋める場所の大きさや深さによって加減します。同じ「刻苧」でも、使う場所に合わせて練り分ける材料です。

麦漆とは何が違いますか

刻苧は「埋める」材料、麦漆は「接着する」材料です。役割が違います。

刻苧漆+木の粉。隙間や欠損を埋める(充填)。体積を持たせるための材料です。
麦漆(むぎうるし)漆+小麦粉。部材どうしを接着する。接着力を得るための材料です。

実際の現場では併用します。たとえば割れた部材なら、まず麦漆で接着し、残った隙間を刻苧で埋めるという順序です。どちらか一方では成立しません。

どの工程で使いますか

下地工程の初め、木地固めの直後です。ここで欠損を残すと、その形が最後まで響きます。

  1. 木地固め 木地に生漆をしみ込ませて固めます。
  2. 刻苧・麦漆 欠損・割れ・仕口の隙間を処理します。← ここ
  3. 布着せ・紙着せ 寒冷紗や麻、和紙で補強します。
  4. 下地付け・研ぎ 下地を付けては研ぐことを繰り返します。

凹みを残したまま下地に進んでも、塗り重ねで消えることはありません。むしろ、光の当たり方でかえって目立つようになります。下地の平滑さは、この段階で決まり始めています。

工程全体は漆塗りの工程で解説しています。

刻苧はどのような手順で埋めますか

傷んだ部分を彫って取り除き、刻苧をヘラで埋め込み、硬化を待ってから研いで平らにします。

  1. 傷んだ部分を除去する 割れ・キズ・虫食いの部分を彫り、脆くなった木を取り除きます。傷んだ木を残したまま埋めても、そこから再び崩れます。
  2. 木地を固める 生漆をしみ込ませ、埋める面を固めます。
  3. 接着が要る箇所は麦漆で 割れて離れた部材は、先に麦漆で接着します。
  4. 刻苧を埋め込む ヘラで隙間の奥まで押し込み、表面を均します。
  5. 硬化を待つ 漆は湿度で硬化します。深い箇所は一度に埋めず、硬化を待って重ねることがあります。
  6. 研いで平らにする 周囲の木地と高さを揃え、布着せ・下地付けへ進みます。

刻苧と埋木はどう使い分けますか

小さな欠損や隙間は刻苧で、大きく欠けた箇所は木片をはめ込む埋木で補います。

刻苧割れ、小さなキズ、虫食いの穴、仕口の隙間など。形に合わせて押し込めるのが利点です。
埋木(うめき)大きく欠けた箇所。欠損部を整形し、木片をはめ込んで補います。

大きな欠損をすべて刻苧で埋めると、硬化に時間がかかり、痩せも出やすくなります。木で補うべきところは木で補い、刻苧は木と木のあいだを埋めるという役割分担です。実際の修理では、両方を組み合わせて木地を整えます。

社寺の修理ではどう使いますか

木地の痩せ、仕口の開き、虫害による欠損を埋め、塗膜を支える面をつくり直すために使います。

社寺建築の修理では、次のような状態に出会います。

  • 乾燥で木地が痩せ、部材間に隙間ができている
  • 仕口が開き、動きが出ている
  • 虫害で内部が食われ、欠損している
  • 過去の修理の充填材が痩せている

ただし「隙間はすべて埋めればよい」というものではありません。神社仏閣では、木材の動きを逃がすためにあえて仕口が開くように塗る場合があります。当初の納まりを読み取り、埋めるべき箇所と残すべき箇所を判断することが前提です。

この判断は、建物ごとに異なります。過去の修理履歴が残っていれば、それも手がかりになります。

漆塗り以外の工事でも刻苧を使いますか

使います。単色塗りや彩色の下地処理でも、木地の欠損を刻苧で補います。

単色塗りの塗り替えでは、旧塗膜を掻き落としたあと、ひび割れ・キズ・虫食いの部分を彫って取り除き、刻苧をヘラで埋め込むか埋木を行って木地を整えます。彩色の新規・復元でも、木地の破損部には埋木や刻苧で充填を行います。

仕上げが漆でも顔料でも、塗膜を支えるのは木地です。刻苧は、塗装の種類を問わず社寺修理の土台をつくる材料といえます。

よくある質問

刻苧(こくそ)とは何ですか

漆に木の粉や繊維などを混ぜて練った、パテ状の充填材です。木屎漆とも書きます。木地の欠けや割れ、部材どうしの接合部である仕口の隙間を埋めるために用い、硬化すると漆の強度を持つため一体的に馴染みます。

刻苧と麦漆の違いは何ですか

刻苧は漆に木の粉を練ったもので隙間や欠損を埋める充填に用い、麦漆は小麦粉と漆を練ったもので部材どうしの接着に用います。実際の現場では、割れた部材をまず麦漆で接着し、残った隙間を刻苧で埋めるというように併用します。

刻苧はどの工程で使いますか

下地工程の初め、木地固めの直後です。ここで欠損を残したまま下地に進んでも塗り重ねで消えることはなく、光の当たり方でかえって目立つようになります。下地の平滑さはこの段階で決まり始めています。

木地の隙間はすべて埋めるべきですか

そうとは限りません。神社仏閣では木材の動きを逃がすために、あえて仕口が開くように塗る場合があります。当初の納まりを読み取り、埋めるべき箇所と残すべき箇所を判断することが前提となります。

刻苧は何でできていますか

生漆に、デンプン糊・綿・木粉などを練り合わせてつくります。生漆が硬化して木地と一体になり、糊が粘りを、綿の繊維が割れにくさを、木粉が体積を与えます。配合は埋める場所の大きさや深さによって加減します。

刻苧と埋木の違いは何ですか

刻苧は漆に木粉などを練ったパテ状の材料で、割れや小さなキズ、虫食いの穴、仕口の隙間を埋めます。埋木は大きく欠けた箇所を整形し、木片をはめ込んで補う方法です。実際の修理では両方を組み合わせて木地を整えます。

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