漆の技法と材料
このページの要点
刻苧(こくそ)とは、漆に木の粉などを練り込んだ、パテ状の充填材です。「木屎漆(こくそうるし)」とも書きます。木地の欠損・割れ・接合部の隙間を埋めるために使う、塗る前の目立たない材料ですが、ここで埋め残した形は、最後まで表面に響きます。
漆に木の粉や繊維を混ぜて練った、粘土状・パテ状の充填材です。
これを、木地の欠けた部分、割れ、部材どうしの接合部である仕口(しくち)の隙間などに詰めて、平らに均します。
硬化すると漆の強度を持つため、単に別材を埋め込むより一体的に馴染みます。木地と塗膜のあいだをつなぐ材料、と考えると分かりやすいでしょう。
生漆に、デンプン糊・綿・木粉などを練り合わせてつくります。
| 生漆 | 全体を固める材料です。硬化すると漆の強さを持ち、木地と一体になります。 |
| デンプン糊 | 粘りを加え、練りやすく、隙間に押し込みやすくします。 |
| 綿 | 繊維を混ぜることで、硬化したあと割れにくくします。 |
| 木粉 | 体積をつくります。「木屎(こくそ)」の名はここから来ています。 |
配合は、埋める場所の大きさや深さによって加減します。同じ「刻苧」でも、使う場所に合わせて練り分ける材料です。
刻苧は「埋める」材料、麦漆は「接着する」材料です。役割が違います。
| 刻苧 | 漆+木の粉。隙間や欠損を埋める(充填)。体積を持たせるための材料です。 |
| 麦漆(むぎうるし) | 漆+小麦粉。部材どうしを接着する。接着力を得るための材料です。 |
実際の現場では併用します。たとえば割れた部材なら、まず麦漆で接着し、残った隙間を刻苧で埋めるという順序です。どちらか一方では成立しません。
下地工程の初め、木地固めの直後です。ここで欠損を残すと、その形が最後まで響きます。
凹みを残したまま下地に進んでも、塗り重ねで消えることはありません。むしろ、光の当たり方でかえって目立つようになります。下地の平滑さは、この段階で決まり始めています。
工程全体は漆塗りの工程で解説しています。
傷んだ部分を彫って取り除き、刻苧をヘラで埋め込み、硬化を待ってから研いで平らにします。
小さな欠損や隙間は刻苧で、大きく欠けた箇所は木片をはめ込む埋木で補います。
| 刻苧 | 割れ、小さなキズ、虫食いの穴、仕口の隙間など。形に合わせて押し込めるのが利点です。 |
| 埋木(うめき) | 大きく欠けた箇所。欠損部を整形し、木片をはめ込んで補います。 |
大きな欠損をすべて刻苧で埋めると、硬化に時間がかかり、痩せも出やすくなります。木で補うべきところは木で補い、刻苧は木と木のあいだを埋めるという役割分担です。実際の修理では、両方を組み合わせて木地を整えます。
木地の痩せ、仕口の開き、虫害による欠損を埋め、塗膜を支える面をつくり直すために使います。
社寺建築の修理では、次のような状態に出会います。
ただし「隙間はすべて埋めればよい」というものではありません。神社仏閣では、木材の動きを逃がすためにあえて仕口が開くように塗る場合があります。当初の納まりを読み取り、埋めるべき箇所と残すべき箇所を判断することが前提です。
この判断は、建物ごとに異なります。過去の修理履歴が残っていれば、それも手がかりになります。
使います。単色塗りや彩色の下地処理でも、木地の欠損を刻苧で補います。
単色塗りの塗り替えでは、旧塗膜を掻き落としたあと、ひび割れ・キズ・虫食いの部分を彫って取り除き、刻苧をヘラで埋め込むか埋木を行って木地を整えます。彩色の新規・復元でも、木地の破損部には埋木や刻苧で充填を行います。
仕上げが漆でも顔料でも、塗膜を支えるのは木地です。刻苧は、塗装の種類を問わず社寺修理の土台をつくる材料といえます。
漆に木の粉や繊維などを混ぜて練った、パテ状の充填材です。木屎漆とも書きます。木地の欠けや割れ、部材どうしの接合部である仕口の隙間を埋めるために用い、硬化すると漆の強度を持つため一体的に馴染みます。
刻苧は漆に木の粉を練ったもので隙間や欠損を埋める充填に用い、麦漆は小麦粉と漆を練ったもので部材どうしの接着に用います。実際の現場では、割れた部材をまず麦漆で接着し、残った隙間を刻苧で埋めるというように併用します。
下地工程の初め、木地固めの直後です。ここで欠損を残したまま下地に進んでも塗り重ねで消えることはなく、光の当たり方でかえって目立つようになります。下地の平滑さはこの段階で決まり始めています。
そうとは限りません。神社仏閣では木材の動きを逃がすために、あえて仕口が開くように塗る場合があります。当初の納まりを読み取り、埋めるべき箇所と残すべき箇所を判断することが前提となります。
生漆に、デンプン糊・綿・木粉などを練り合わせてつくります。生漆が硬化して木地と一体になり、糊が粘りを、綿の繊維が割れにくさを、木粉が体積を与えます。配合は埋める場所の大きさや深さによって加減します。
刻苧は漆に木粉などを練ったパテ状の材料で、割れや小さなキズ、虫食いの穴、仕口の隙間を埋めます。埋木は大きく欠けた箇所を整形し、木片をはめ込んで補う方法です。実際の修理では両方を組み合わせて木地を整えます。
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