漆の技法と材料
このページの要点
蝋色塗(ろいろぬり)とは、上塗りした漆の刷毛目を炭で研いで消し、生漆を摺り込んでは磨くことを繰り返して、鏡のような光沢に仕上げる技法です。呂色塗とも書きます。本質は「塗って出す艶」ではなく「削って出す艶」であること。手間は花塗の比ではありませんが、どちらが上等という関係ではありません。
上塗りの刷毛目を研いで消し、摺り込みと磨きを繰り返して鏡面に仕上げる技法です。
漆を刷毛で塗ると、どうしても刷毛の跡(刷毛目)がわずかに残ります。これをそのまま活かす仕上げが花塗(塗立)、研いで消して磨き上げるのが蝋色塗です。
重要なのは、使う漆から違うという点です。蝋色に用いるのは油分を入れない蝋色漆。油分のある塗立漆では、いくら磨いても深い艶は出ません。
炭で水研ぎして平らにし、生漆を摺り込んでは磨くことを繰り返して、少しずつ艶を上げていきます。
この工程にはやり直しがききません。研ぎすぎれば塗膜を失い、足りなければ艶が出ない。塗膜の厚みは限られているため、加減がすべてです。手の感覚に依存する度合いが最も高い工程といえます。
油分を入れない蝋色漆、研ぎに使う炭、摺り込む生漆、研磨に使う磨き粉が中心です。
| 蝋色漆 | 上塗りに使う、油分を入れない漆。これでなければ深い艶は出ません。 |
| 炭 | 胴擦りで上塗り面を水研ぎし、刷毛目を平らにします。 |
| 生漆 | 研いだ面に薄く摺り込み、艶の土台をつくります。 |
| 磨き粉 | 摺り込んだ漆を研磨し、艶を上げていきます。 |
材料は少なく見えますが、同じ作業を何度も繰り返し、少しずつ艶を上げるところに手間がかかります。
優劣はありません。性格が違うため、場所や部材によって使い分けます。
| 花塗(塗立) | ふっくらとやわらかい艶。刷毛目がわずかに残り、温かみのある表情になります。広い面や、柔らかさを求める部分に。 |
| 蝋色塗 | 深く沈んだ鏡面の艶。光を映し、周囲を引き締めます。目線に近く、格を示したい部分に。 |
社寺建築では、この二つを部位によって使い分けます。修理においては、当初がどちらであったかを見極めることが出発点です。当初が花塗の面を蝋色にしてしまえば、その建物が本来持っていた表情が変わってしまいます。
両者の違いは漆塗りの種類と違いでも整理しています。
面に周囲がどう映り込むかを見ると分かります。蝋色は鏡のように像を映し、花塗はやわらかく光を返します。
| 蝋色塗 | 刷毛目が消えているため、映り込んだ像がゆがまず、くっきり見えます。 |
| 花塗(塗立) | 刷毛目の名残があり、光はふっくらとやわらかく広がります。 |
斜めから光を当てると、違いはさらにはっきりします。修理の調査では、こうした見え方に加えて塗膜の状態も確かめ、当初の仕上げを見極めます。
摺り漆と磨きを何度も繰り返すうえ、摺り込んだ漆が硬化するのを毎回待つ必要があるからです。
摺り漆は、塗って終わりではありません。漆は湿度で硬化するため、摺り込むたびに硬化を待ち、それから磨きます。これを、艶が上がるまで繰り返します。
さらに、上塗りの漆が十分に硬化していなければ、研ぎに耐えられません。蝋色は「塗り上がってから始まる工程」であり、花塗より工期が長くなるのはこのためです。
鏡面であるぶん擦り傷や艶引けが目立ちやすく、塗膜の残り厚みによって対処が変わります。
| 軽い曇り・擦り傷 | 塗膜が十分に残っていれば、磨き直しで回復する場合があります。 |
| 艶引けが広い | 摺り漆と磨きをやり直します。 |
| 塗膜が薄い・下地が見える | 研ぐ余地がないため、塗り直しから必要になります。 |
手が触れる框(かまち)や框回りは減りが早く、傷みが集中します。「艶がなくなった=塗り直し」とは限りません。まずは塗膜の状態を拝見して判断します。
関連:漆塗りの修理・塗り直し/漆の種類
柔らかい布での軽い乾拭きを基本とし、水・洗剤・直射日光を避けることです。
艶が落ちてきても、塗膜が十分に残っていれば磨き直しで回復する場合があります。早めに状態を見ておくことが、塗り直しを避ける近道です。
上塗りした漆の刷毛目を炭で研いで消し、生漆を摺り込んでは磨くことを繰り返して鏡のような光沢に仕上げる技法です。呂色塗とも書きます。塗って出す艶ではなく、削って出す艶である点が特徴です。
優劣はありません。花塗はふっくらとやわらかい艶で温かみのある表情、蝋色は深く沈んだ鏡面の艶で周囲を引き締めます。社寺建築では場所や部材の性格によって使い分けます。修理では当初がどちらであったかを見極めることが出発点になります。
違います。蝋色には油分を入れない蝋色漆を用います。油分のある塗立漆では磨いても深い艶が出ないためで、蝋色にするか花塗にするかは塗り始める前に決めておく必要があります。あとから変更することはできません。
必ずしもそうではありません。塗膜が十分に残っていれば磨き直しで回復する場合があります。艶引けが広ければ摺り漆と磨きをやり直し、塗膜が薄く研ぐ余地がない場合に塗り直しとなります。まず塗膜の状態を確認して判断します。
面への映り込みで分かります。蝋色は刷毛目が消えているため映り込んだ像がゆがまず鏡のように見え、花塗は刷毛目の名残があって光がやわらかく広がります。斜めから光を当てると違いがよりはっきりします。
上塗りのあと、炭での水研ぎ、生漆の摺り込み、磨きを何度も繰り返すうえ、摺り込んだ漆が湿度で硬化するのを毎回待つ必要があるからです。上塗りの漆が十分に硬化してから始まる工程でもあり、花塗より工期が長くなります。
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