漆の技法と材料
このページの要点
漆塗りは「うるしぬり」と読みます。そして漆を塗る技術そのものを「髤漆(きゅうしつ)」と呼びます。見慣れない字ですが、文化財保護の分野では技術の正式名称として使われる用語です。仕様書や報告書で目にすることがあります。

「うるしぬり」です。「漆」一字は「うるし」と読みます。
| 漆塗り | うるしぬり |
| 漆塗 | うるしぬり(送り仮名なしの表記。読みは同じ) |
| 漆 | うるし |
| 漆塗装 | うるしとそう |
「漆塗装」という言い方もありますが、文化財や社寺建築の分野では「漆塗り」を用いるのが一般的です。仕様書などでは「漆塗」と送り仮名なしで書かれることもあります。
髤漆と書いて「きゅうしつ」と読み、漆を塗る技術全般を指します。
「髤(きゅう)」は漆を塗ることを意味する字です。そこから、漆を塗る技術を髤漆と呼びます。「髹漆」とも書きます。
読者が検索でこの字にたどり着くのは、多くの場合仕様書や文化財関係の資料で見かけたときです。読み方さえ分かれば、あとは「漆塗りの技術のこと」と理解して差し支えありません。
漆の分野には読みにくい用語が多くあります。仕様書や報告書でよく見かけるものを一覧にしました。
| 生漆 | きうるし。採取した樹液を漉して不純物を除いたもの。 |
| 粗味漆 | あらみうるし。採取したままの樹液。 |
| 素黒目 | すぐろめ。精製した透明な漆。木地呂漆(きじろうるし)とも。 |
| 朱合漆 | しゅあいうるし。透明な漆に油分を入れたもの。 |
| 蝋色 | ろいろ。研いで磨き上げる鏡面仕上げ。呂色とも。→蝋色塗とは |
| 刻苧 | こくそ。漆に木粉などを練った充填材。木屎とも。→刻苧とは |
| 麦漆 | むぎうるし。小麦粉と漆を練った接着材。 |
| 箔下漆 | はくしたうるし。金箔を押すための漆。 |
| 漆箔 | しっぱく。漆で金箔を押す技法。→漆箔とは |
| 溜塗 | ためぬり。色漆の上に透き漆を重ねる塗り。 |
| 梨地 | なしじ。金粉を蒔いて漆を重ね、研ぎ出す技法。→梨地とは |
| 摺漆 | すりうるし。木地に漆を摺り込む仕上げ。拭き漆とも。 |
| 胴擦り | どうずり。蝋色の工程で、炭で水研ぎすること。 |
| 湿し | しめし。現場で湿度を整え、漆の硬化を助ける作業。 |
工法、下地、仕上げ、材料の四点です。「漆塗」の一語だけでは、手間も費用も決まりません。
| 工法 | 古漆をすべて掻き落として下地からやり直す本直しか、既存の塗膜を活かす上塗り直しか。 |
| 下地 | 地の粉・砥の粉を漆で練る堅地(かたじ)か、膠で練る半田地(はんだじ)か。半田地は堅地の代用として開発された下地です。 |
| 仕上げ | 刷毛目を残す花塗(塗立)か、研いで磨く蝋色か、金箔押しを伴うか。 |
| 材料 | 国産漆の使用が求められるか。文化財修理では国産漆の使用が原則です。 |
同じ「漆塗」でも、この組み合わせで工程数は大きく変わります。仕様の読み方で迷われたら、図面や仕様書をお送りください。工法の整理からお手伝いします。
南蛮貿易から万国博覧会にかけて日本の漆器が高く評価され、漆器そのものが国名で呼ばれるようになったためです。
漆の利用は縄文時代までさかのぼります。割れた土器の接着や、矢じりの接合に漆を使った遺物が見つかっています。
鎖国前の南蛮貿易では、蒔絵を施した漆器や調度品が輸出品として人気を博しました。マリア=テレジア、マリー=アントワネット親子のコレクションに加えられ、現在もベルサイユ宮殿博物館に飾られています。
開国後も万国博覧会で人気となり、漆器そのものが「JAPAN(ジャパン)」と呼ばれるほどでした。陶磁器が「china」と呼ばれたのと同じ構図です。
家庭用品への使用は減り、現在は社寺仏閣の建造物や荘厳具への塗料としての利用がほとんどです。
化学塗料の利便性と価格に押され、日用品としての漆器は少なくなりました。一方で、社寺建築の分野では代替できない材料として使われ続けています。文化財修理では国産漆の使用が原則として義務づけられているためです。
また近年は、現代アートの素材として再評価される動きもあります。
当社は文化財・社寺建築の分野で、この技術を実際の建物と荘厳具に施し続けています。漆塗り/国産漆と漆掻きもあわせてご覧ください。
実際の施工を通じて、上級技能者から若手へと受け継がれています。
漆は天然の素材で、温度や湿度によって硬化の進み方が変わります。塗る厚み、研ぐ加減、硬化を待つ時間——いずれも数値だけでは決めきれず、現場で素材の変化を見ながら判断する経験が要ります。
当社は一般社団法人 社寺建造物美術保存技術協会の正会員で、漆塗り工事の上級技能者が在籍しています。そのもとで20代〜30代の若手技能者が、日々の施工を通じて技術を身につけています。
「うるしぬり」と読みます。「漆」一字は「うるし」です。「漆塗」と送り仮名なしで表記されることもありますが読みは同じです。文化財や社寺建築の分野では「漆塗装」より「漆塗り」を用いるのが一般的です。
髤漆と書いて「きゅうしつ」と読み、漆を塗る技術全般を指します。「髤」は漆を塗ることを意味する字で、「髹漆」とも書きます。日常ではあまり使いませんが、文化財保護の分野では技術の名称として用いられる正式な用語で、仕様書や報告書で目にすることがあります。
南蛮貿易の時代に蒔絵を施した漆器や調度品が輸出品として人気を博し、開国後も万国博覧会で高く評価されたためです。陶磁器が china と呼ばれたのと同じように、漆器そのものが JAPAN と呼ばれるようになりました。
工法(本直しか上塗り直しか)、下地(漆で練る堅地か膠で練る半田地か)、仕上げ(花塗か蝋色か、金箔押しを伴うか)、材料(国産漆の使用が求められるか)の四点です。この組み合わせで工程数と費用が大きく変わります。
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